理学療法士と企業がパワーアシストグローブの実証実験をスタート
2016/06/20
オヤミルで、リハビリ機器を開発・販売している企業と経験豊富な理学療法士が出会った。
麻痺のある方のためのパワーアシストグローブを開発・販売しているダイヤ工業と理学療法士の田中一秀先生だ。
リハビリ専門職とパワーアシストグローブの相性は非常に良い。
ダイヤ工業のパワーアシストグローブは、ダイヤ工業と岡山大学が共同研究したグローブの甲から指先部分まで装着し、配置された人工筋が指を曲げる方向に湾曲し、物を握る動作をする仕組みをもった製品だ。炭酸ガスボンベ(1本で約100回程度の使用)約2Kgの握力支援が可能になり、500ミリのペットボトル、電気シェーバーの使用、ペンを持って字や絵を書くなどの動作を可能にする。
一方、田中先生は株式会社AwesomeLifeの代表取締役で理学療法士だ。
田中先生は、リハビリ器具やロボット等の実証実験を多数実施されている理学療法士であり、田中先生の教え子の理学療法士・作業療法士は様々な分野で活躍されている。
今回、ダイヤ工業と田中先生はオヤミルを通してつながり、製品の共同研究開発に乗り出した。
ダイヤ工業の技術・開発力と、理学療法士としての知識・スキルそして経験が豊富な田中先生により、脳血管疾患などの患者さん・利用者さんのために実証実験を行い、更に製品を現場に則した形でより良くしていく。
理学療法士は、患者さん・利用者さんと1対1で、その能力を遺憾なく発揮しているが、
製品を通して貢献することもできることを伝えたい。開発やマーケティングにあたっては、実際に身体のことを知っている人の知見が必要であるからだ。
以下は、田中先生からのメッセージとパワーアシストグローブの製品分析である。
リハビリテーションはセラピストが行うもの。
そう信じて関わってきた。
人しかできない、人じゃなきゃできない。
その意欲で目の前の患者と戦ってきた。
多くのセラピストがこのような心意気で日々努力していると思う。
それが治療手技の向上、臨床思考過程を押し上げてきている。
その気持ちとは裏腹に、担うべき役割が増加しているのも事実である。
病院生活の管理、さらには在宅における生活、また社会・地域での活動などその先のステージなどを見渡しながらいまのステージで出来うる最大限の能力を作り上げている。
まさに「手が足りない」のである。
多くの臨床家が「養成校過剰論」を唱える中、現場は疲弊しきっている。
毎日の治療に追われ、思うように自己研鑽できず、結果がついてこない悪循環に陥る。
いまセラピストが抱えているこの負の循環を取り除くものはロボット技術であるといっても過言ではない。その可能性を感じ多くのロボットをリハビリテーションに使用できないか試行錯誤している。
ロボットというと、高価で、臨機応変性がなく、面白みがないと思うのが一般的だろう。
イメージも鉄腕アトムかドラえもんといった超未来型を持っている。
残念ながら漫画のような世界はまだ来ていない。
万能のように見えるロボットスーツもいま動き始めたばかりであるし、コミュニケーションロボットもまだヨチヨチと歩き始めたに過ぎない。
では何が優れているのかということになる。
実は医療とはオーダーメイドであるとともにセミオーダーの要素が強い。
要は10人の患者がいても10通りの治療を選択できない。
共通する治療は多くある。その場合、治療の可否さえできれば一定のスキルがあることで行うことは可能なのである。
立ち上がり訓練、自立歩行訓練、安定した姿勢での筋力トレーニング、これらはこの適否さえ決まれば結果に差の出にくい項目とも言える。
このような項目は専門家以外が対応することができる可能性がある。
そうなれば時間的制約も少なくなり、臨床思考を、じっくり行うことが可能になるはずである。
それらを担うのは違う資格の代替よりも、機器の方が良い。
人の介入は思い違いや、知識技術によってムラが出る。
これを人間味があってよいとする場合もあるが、こと公的費用がからんでくるものにとって、不確定な介入は避けるべきである。機器は余程のことがない限り裏切らない。
思い通り動かないときは操作する側の問題が一番にある。再現性さらに妥当性に優れていると言ってもよい。そのような側面から考えるとロボットの導入は医療や介護で進むべき道だと考える。今回まさにその内容に合致するロボットを使用したので、報告する。
脳卒中による手指の拘縮は多くのクライアントの課題である。
「どうせ使わないから時間をかけられない」と思われがちだが、当事者にとれば一番気になるところでもある。座っている時でも手指が握り込み、歩けばさらに強くなる。これほど自らの体で不甲斐ないと思うことはないだろう。
しかし治療法は確定されず、現場でも困難な対象となりがちだ。その一端を支援するロボットとして、いまハンドアシスティブロボットがにわかに脚光を浴びている。曲がってしまった手指を、全部の指をうまく伸ばすのは専門家でもなかなかのスキルがいる。力加減や関節の位置、さらに本人の緊張のコントロールなど時間と労力がかかる。
その面をサポートできるのが前述のロボットである。
本ロボットの多くは空気圧を用い、グローブ用の補助器具を使い、手指の曲げ伸ばしを自動的に促すのである。一度設定すれば30分でも1時間でも連続施行が可能である。通常の治療的介入では考えられない費用対効果である。
これらロボットの特異的なメリットはその動きにある。手指が弛緩し動きが見えない場合には、握ったり開いたり連続で動くものが適しているだろうし、握り込みが強い場合には力強く指を伸ばし続けることができるものが好まれるだろう。
また屋外や生活の場面での握力の支援に使うのであればモバイル性は重要である。
例えばダイヤ工業から販売されているパワーアシストグローブだが、これは携帯性に優れ、まさに生活領域内にどこでも持ち運べるロボットである。握力が弱くものを握り続けることができないから、特定の動作ができないと言った場合に有効に使用できる。
バットを振り回すだけの握力がない、筆を握り続けながら書道ができない、花の茎をつかんで剣山に刺すことができないなど、まさに活動的な場面での支援ができるのである。
しかし機器は万能ではない。本機器においては、握り込む力が弱めであることや、空気ボンベを使っているので使い切ってしまえば新しく購入する必要がある。
そのようなデメリットも使わなければわからない。我々のイメージとはかけ離れているためにロボットは使わなければその良さを見出すことができないのである。
これから多くの技術が開発されその度に目にすることだろう。
ぜひ経験もせずに否定するのではなく、自ら展示ブースに足を運び、体験してほしい。自分の可能性に気づく瞬間に立ち会えるはずだ。
ロボットを基盤にしたリハビリテーション技術と知識が成熟していくとこを真に願っている。
■ ダイヤ工業株式会社
https://www.daiyak.co.jp/index.html
■ 株式会社AwesomeLife
http://awesome-life.jimdo.com/
田中先生によるパワーアシストグローブの比較分析
麻痺のある方のためのパワーアシストグローブを開発・販売しているダイヤ工業と理学療法士の田中一秀先生だ。
リハビリ専門職とパワーアシストグローブの相性は非常に良い。
ダイヤ工業のパワーアシストグローブは、ダイヤ工業と岡山大学が共同研究したグローブの甲から指先部分まで装着し、配置された人工筋が指を曲げる方向に湾曲し、物を握る動作をする仕組みをもった製品だ。炭酸ガスボンベ(1本で約100回程度の使用)約2Kgの握力支援が可能になり、500ミリのペットボトル、電気シェーバーの使用、ペンを持って字や絵を書くなどの動作を可能にする。
一方、田中先生は株式会社AwesomeLifeの代表取締役で理学療法士だ。
田中先生は、リハビリ器具やロボット等の実証実験を多数実施されている理学療法士であり、田中先生の教え子の理学療法士・作業療法士は様々な分野で活躍されている。
今回、ダイヤ工業と田中先生はオヤミルを通してつながり、製品の共同研究開発に乗り出した。
ダイヤ工業の技術・開発力と、理学療法士としての知識・スキルそして経験が豊富な田中先生により、脳血管疾患などの患者さん・利用者さんのために実証実験を行い、更に製品を現場に則した形でより良くしていく。
理学療法士は、患者さん・利用者さんと1対1で、その能力を遺憾なく発揮しているが、
製品を通して貢献することもできることを伝えたい。開発やマーケティングにあたっては、実際に身体のことを知っている人の知見が必要であるからだ。
以下は、田中先生からのメッセージとパワーアシストグローブの製品分析である。
そう信じて関わってきた。
人しかできない、人じゃなきゃできない。
その意欲で目の前の患者と戦ってきた。
多くのセラピストがこのような心意気で日々努力していると思う。
それが治療手技の向上、臨床思考過程を押し上げてきている。
その気持ちとは裏腹に、担うべき役割が増加しているのも事実である。
病院生活の管理、さらには在宅における生活、また社会・地域での活動などその先のステージなどを見渡しながらいまのステージで出来うる最大限の能力を作り上げている。
まさに「手が足りない」のである。
多くの臨床家が「養成校過剰論」を唱える中、現場は疲弊しきっている。
毎日の治療に追われ、思うように自己研鑽できず、結果がついてこない悪循環に陥る。
いまセラピストが抱えているこの負の循環を取り除くものはロボット技術であるといっても過言ではない。その可能性を感じ多くのロボットをリハビリテーションに使用できないか試行錯誤している。
ロボットというと、高価で、臨機応変性がなく、面白みがないと思うのが一般的だろう。
イメージも鉄腕アトムかドラえもんといった超未来型を持っている。
残念ながら漫画のような世界はまだ来ていない。
万能のように見えるロボットスーツもいま動き始めたばかりであるし、コミュニケーションロボットもまだヨチヨチと歩き始めたに過ぎない。
では何が優れているのかということになる。
実は医療とはオーダーメイドであるとともにセミオーダーの要素が強い。
要は10人の患者がいても10通りの治療を選択できない。
共通する治療は多くある。その場合、治療の可否さえできれば一定のスキルがあることで行うことは可能なのである。
立ち上がり訓練、自立歩行訓練、安定した姿勢での筋力トレーニング、これらはこの適否さえ決まれば結果に差の出にくい項目とも言える。
このような項目は専門家以外が対応することができる可能性がある。
そうなれば時間的制約も少なくなり、臨床思考を、じっくり行うことが可能になるはずである。
それらを担うのは違う資格の代替よりも、機器の方が良い。
人の介入は思い違いや、知識技術によってムラが出る。
これを人間味があってよいとする場合もあるが、こと公的費用がからんでくるものにとって、不確定な介入は避けるべきである。機器は余程のことがない限り裏切らない。
思い通り動かないときは操作する側の問題が一番にある。再現性さらに妥当性に優れていると言ってもよい。そのような側面から考えるとロボットの導入は医療や介護で進むべき道だと考える。今回まさにその内容に合致するロボットを使用したので、報告する。
脳卒中による手指の拘縮は多くのクライアントの課題である。
「どうせ使わないから時間をかけられない」と思われがちだが、当事者にとれば一番気になるところでもある。座っている時でも手指が握り込み、歩けばさらに強くなる。これほど自らの体で不甲斐ないと思うことはないだろう。
しかし治療法は確定されず、現場でも困難な対象となりがちだ。その一端を支援するロボットとして、いまハンドアシスティブロボットがにわかに脚光を浴びている。曲がってしまった手指を、全部の指をうまく伸ばすのは専門家でもなかなかのスキルがいる。力加減や関節の位置、さらに本人の緊張のコントロールなど時間と労力がかかる。
その面をサポートできるのが前述のロボットである。
本ロボットの多くは空気圧を用い、グローブ用の補助器具を使い、手指の曲げ伸ばしを自動的に促すのである。一度設定すれば30分でも1時間でも連続施行が可能である。通常の治療的介入では考えられない費用対効果である。
これらロボットの特異的なメリットはその動きにある。手指が弛緩し動きが見えない場合には、握ったり開いたり連続で動くものが適しているだろうし、握り込みが強い場合には力強く指を伸ばし続けることができるものが好まれるだろう。
また屋外や生活の場面での握力の支援に使うのであればモバイル性は重要である。
例えばダイヤ工業から販売されているパワーアシストグローブだが、これは携帯性に優れ、まさに生活領域内にどこでも持ち運べるロボットである。握力が弱くものを握り続けることができないから、特定の動作ができないと言った場合に有効に使用できる。
バットを振り回すだけの握力がない、筆を握り続けながら書道ができない、花の茎をつかんで剣山に刺すことができないなど、まさに活動的な場面での支援ができるのである。
しかし機器は万能ではない。本機器においては、握り込む力が弱めであることや、空気ボンベを使っているので使い切ってしまえば新しく購入する必要がある。
そのようなデメリットも使わなければわからない。我々のイメージとはかけ離れているためにロボットは使わなければその良さを見出すことができないのである。
これから多くの技術が開発されその度に目にすることだろう。
ぜひ経験もせずに否定するのではなく、自ら展示ブースに足を運び、体験してほしい。自分の可能性に気づく瞬間に立ち会えるはずだ。
ロボットを基盤にしたリハビリテーション技術と知識が成熟していくとこを真に願っている。
■ ダイヤ工業株式会社
https://www.daiyak.co.jp/index.html
■ 株式会社AwesomeLife
http://awesome-life.jimdo.com/
田中先生によるパワーアシストグローブの比較分析
製品名 | パワーアシストグローブ | プロトタイプ パワーアシストグローブ | パワーアシストハンド |
販売会社 | ダイヤ工業株式会社 〒701-0203 岡山県岡山市南区古新田1125 |
ダイヤ工業株式会社 〒701-0203 岡山県岡山市南区古新田1125 |
株式会社 エルエーピー 〒243-0812 神奈川県厚木市妻田西 1-19-22 |
価格 | 200,000 | 300,000 | 300,000 |
製品紹介 | 空気圧人工筋は二酸化炭素を送り込み加圧することで湾曲させます。 グローブの甲から指先部分まで装着し、配置された人工筋が指を曲げる方向に湾曲し、物を握る動作をする仕組みです。 炭酸ガスボンベ(1本で約100回程度の使用)約2Kgの握力支援が可能。(500ミリのペットボトル、電気シェーバーの使用、ペンを持って字や絵を書くなど) |
空気圧にてグローブが膨張し、手首から指先までを圧迫します。 空気注入、保持、空気抽出、休憩を繰り返し設定が可能。 |
パワーアシストハンドは、ベローズ(空気袋)の膨張・収縮を繰り返し行うことにより、他動的・律動的に反復して、手指関節の屈伸運動を継続的に行う、リハビリテーション補助機器 1.安全・安心 福祉用品の定義としては、安全第一でなければなりません。ベローズ内への空気の出し入れによる膨張・収縮動作システムと低圧ポンプを採用することで、過剰な力が発生することを防ぎました。 2.簡単な装着と操作 取り付け・取り外しをスムーズにするため、手のひら側を大きくカット。摩擦が少ないので装着感も良好です。また、“ひらく” “とじる”に限定したシンプル動作でどなたでも扱いやすい仕様です。 3.やさしくフィット グローブの装着感・フィット感を高めるため、素材やサイズ等こだわりをもって子ども用から大人用まで各種サイズから選ぶことができ、手のひら側を開けた構造で、肌で実感しながら、“つかむ”の実現に繋げることができます。 4.症状に柔軟に対応 手指の動きがこわばっている方、関節が固まりかけている方など、状況にあわせて調節可能です。 |
適応 | 手指機能が著しく低下し、弛緩性麻痺を伴っている。また肩関節、肘関節は比較的随意性が高い場合が適応となる。 | 手指屈曲拘縮が軽度から中程度、特に手関節のモビリティーが低い場合に適応が高い。リンパ浮腫などにより手部が浮腫を起こしている場合には、適応が高い | 手指の屈曲拘縮が軽度から中等度であること。さらに指関節の拘縮が強直にまで至っていないことが条件となる。また筋緊張も軽度が望ましく、他動的に全可動域動くことが適応となる。 |
禁忌 | 特に無し。グローブ等の形状は融通性があり、通気性も高いため禁忌は少ない | 浮腫が強いこと、さらに指関節の可動性が少ないこと、手部に皮膚炎証が起こっている場合には禁忌である。浮腫が強い場合には手部全体を一様に圧迫するため、強い力で圧迫する場合血栓など悪影響も考慮できる。また空気圧が高いため、ストレッチ効果が高い反面、過度におこないすぎてしまう可能性もあるため、指関節の拘縮が強い場合は控えたほうが良い。グローブに通気性がよわいため、施行中湿度型k丸。またグローブの衛生面も考慮したい。 | 指関節の拘縮が強い、筋緊張が強い。 グローブの形状は空風されており、はめやすい反面、力が分散し手指伸展に効果が薄い。可動域範囲内では屈伸運動を行うことができることはじゅうようだがストレッチ効果は薄い。 |
所感 | モバイル性が高く、屋外で施行することができることは生活に直結する製品と思われる。しかし適応障害が限られ、実際に使用する条件に満たないことが多い。また「動作の補助」という観点よりも、「動作のしやすさ」の支援という視点を帰ると、脳卒中による上肢への強い筋緊張を有している患者に対し、パワーを上げられた製品であれば、手部の緊張の抑制できることで、全身の過剰な筋緊張を抑制するもしくは、歩行の円滑性を助長する可能性がある。これは今後の実証次第というところ。 | 圧迫力が強く、中等度拘縮であれば十分な伸展効果を得られる。グローブが特殊形状ではないためつけにくいこともあるが、適切に装着できていなくても、伸展ができることから、そこにこだわることはない。30分程度連続で行うと皮膚と筋の指間を確認することができる。 | オープングローブになっていることから、自分の指が確認しながら運動を行えることは運動学習効果が高い。装着の仕方も一度理解できれば、一人で装着も可能である場合がある。 本機器において、自分で脱着できることが有効性が高い。人の手を借りるとなると、継続性が低くなる。 セルフトレーニングには簡易性、フィードバックなど様々な要因が重要となる。 |
有効性 | 携帯性が高い 簡易である グローブの汎用性が高い |
力が強い 細かな設定が可能 |
手指の動きに準じた促通 手指拘縮があっても装着しやすいグローブ 手指屈伸反復が可能 |
希望改善点 | 圧迫力を1.5〜2倍ほど高めることができると効果が高い。 特に伸展グローブの用途の検討が必要。 |
グローブの通気性の向上 装着の簡便性 グローブの形状の再検討 |
圧迫力の向上 屈曲の支援も同時に。 |