責任者ポジションのセラピスト必見!「拠点型の介護サービスを立ち上げる際の重要なマーケティングの観点」
中川逸斗
2015/11/01

中川逸斗(Nakagawa Hayato) 株式会社ケアレンツ 取締役

1984年大阪府生まれ。同志社大学卒業後、大手外資系コンサルティングファーム2社(IBMおよびDeloitte)で様々な業界のクライアントの経営戦略構築や業務改善、マーケティング、ITプロジェクト等に従事。その後、医療・介護系企業でミャンマー・台湾・ドバイなどの国際案件や国内の事業企画等に従事した後、現職。

Facebook:https://www.facebook.com/hayato.nakagawa.37

訪問看護ステーションは2015年現在、全国で約7400事業所存在し、年間で400の事業所が廃止・もしくは休止に追い込まれています。
しかも全国の統計を取ると、廃止・休止理由がほぼ同じ理由であることが分かります。


(図1)47都道府県の訪問看護ステーションの廃止・休止を横軸に絶対数・縦軸に届出数に対する廃止・休止数。縦軸を見ると、それほどバラつきはないため、地域性における要因は少ないと推察される。

なぜか。

これは、訪問看護の人員基準が2.5人以上という厳しい条件と、マーケティングの観点がすっぽりと抜け落ちているからだと私は思います。

PTOTSTの皆様が立ち上げる訪問看護にしても、デイサービスにしても、事業を立ち上げるということは、非常に素晴らしい事であり、また強い想いもあると思います。
一方で、事業継続の観点も非常に重要です。

事業立ち上げおよび継続に重要な要素は

  • 地域貢献などへの想い
  • その地域の定性的な状況(懇意にしているケアマネの存在、地域文化、定性ニーズなど)
  • その地域の定量的な状況
です。

本記事においては、3 を取り上げます。

拠点型サービス(デイサービスなど)を立ち上げる場合、どのような情報を収集するでしょうか。
よくあるパターンが、「高齢者数・要介護者数が多いから、この地域にしよう」という観点や、市場規模のみで判断してしまうパターンです。もちろん、その観点だけで、うまくいく可能性も十分にありますし、そのような事例もたくさんあります。

しかし、規模だけで判断するのは危険です。
ここまでは、もちろん皆さんも理解されていると思います。

そこで、私は実際に存在するリハビリ特化型のデイサービスの情報をもとに、分析してみました。

拠点型サービス(特にデイサービス)を立ち上げる際の重要な分析観点は大きく5つあると思います。

  • 要介護者数
  • 通所介護数もしくはリハ病院数
  • 介護事業者数
  • 当該地域の財政状況
  • 当該地域の介護給付費受給者数
です。

上記5つの観点をどう分析・調理するのかが重要です。

-マーケットの魅力度-
  • 実質マーケット規模(要介護者数÷リハ病院数もしくはデイサービス数)
  • マーケットの成熟度(=介護事業者数≒ケアマネさんの成熟度)

-事業リスクの観点-
  • 介護給付費受給者数÷要介護認定者数
  • 介護予防給付費÷要介護認定者数


  • マーケット規模を競合で除して、実質のマーケット規模を算出します(いくらマーケット規模が大きくても競合が多かったり、非常に強い競合があるだけでも、苦戦するため)立ち上げるデイサービスの特色によって、分母を何に設定するかが変わってきます。
  • 特にリハビリを重視するデイサービスの場合、その地域のケアマネさんがどれほどリハビリの知識を持っているかが重要になります。これをマーケットの成熟度(=介護事業者数)で測定します。ちなみに約30店舗の売上高とマーケット成熟度の相関係数は0.78712でした。
  • は、介護給付受給者の率です。これが高いほど、その地域で介護サービスが使われているということになるので、その地域で介護サービスがあまり使われていない場合、事業環境リスクは高まります。
  • は、要介護認定者1人あたりの給付費なので、その地域の財政状況が見えてきます。その地域の財政状況が悪いと、必然的に事業リスクは高まります。
  • 当該地域の介護給付費受給者数

このA)~D)をマトリクスにすると、必然的に(事業継続という意味で)攻めるべき地域が見えてきます。

また、上記は仮説に過ぎないですが、実際のデイサービス約30店舗で検証してみました。

すると・・・・

利益が高い事業所とそうでない事業所が、上記で記述したマトリクス上で、くっきりとプロットさたので、この仮説はある程度合っている、かもしれません。(事業によって分析の軸が変わるため、一概に正しいとは言えませんし、ケースによって改めて考える必要があります。詳しくはダウンロード資料)

定量的な観点だけで、判断するのはよくありません。そこに“想い”が必ず付随しておいてほしいと思っています。ただ、途中で廃止・休止になると、最終的に不便するのは利用者さんなので、“事業継続”の観点と想いをセットにして事業を立ち上げて頂きたいと思っています。

サービス提供者がイキイキすれば、最終的に地域の利用者さんも幸せになれると信じています。
ご参考までですが、下記、資料をダウンロードできます。


 
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