地域で活躍する作業療法士より~さらに一歩引いた俯瞰的視点をもてるか
大郷和成
2016/01/01

大郷和成さん(作業療法士)

・NPO法人laule’a(ラウレア)副理事長
・元新戸塚病院 副技士長
・作業療法による健康を考える会 代表
・促通反復療法 講師
・日本青年国際交流機構 運営委員
元新戸塚病院の副技士長(作業療法士)。元々は医療現場で働いていたが、作業療法士の可能性と地域でのニーズを感じ、独立。NPO法人laule’a 副理事長に就任。laule’aでは、障害を持つ子供たちのための放課後等デイサービス(遊びリパーク リノア)を神奈川県は辻堂で運営。また、laule’aだけでなく、内閣府の国際交流事業、かながわ脳トレ教室、鎌倉バリアフリービーチでのイベント、地域の寺子屋、各種講演など様々な地域のニーズに応えるために、活動の幅を拡大している。セラピストのキャリア支援や教育にも強みを持ち、今後は教育・育成の現場にも活動領域を拡大していく予定。神奈川県における促通反復療法のパイオニアでもある。

「地域の課題やニーズを捉えるためにはどうしたらいいのか」
その問いに答えるとしたら
「地域の人とじっくり話すこと」
ここに尽きます。

私は作業療法士として、団地を舞台に障害児支援と地域の健康づくりを展開しています。
団地の商店街の一角にあるので、地域の方々の導線上になっています。
地域の人がふらっと訪れることも多く、立ち話が長引くこともしばしば。
そんなときこそ地域課題やニーズを把握するチャンスですね。

さて、ここをご覧になっている皆さんの関心事は、
「課題やニーズを把握して、どのような活動を展開していくのか」にあると思います。
把握だけで実践しないのであれば、家でマンガを読むのと変わらないですからね。

今回お伝えしたいことは「俯瞰的視点」です。
俯瞰(ふかん)とは、高いところから見下ろすという意味。
全体を把握するために、客観的よりさらに一歩引いた視点を持つことが大事ということです。

具体例を交えながら説明していきます。

社会課題を「地域における要介護高齢者の社会参加支援」としましょう。
おそらく、訪問リハ・デイケア・デイサービスでの活動をイメージする方が多いのではないでしょうか。
この課題に対してセラピストとしてどのような支援ができるかを考えると(図1)のような視点になります。

この視点だと地域課題とセラピストの二者関係になっており、普段実施しているリハビリテーションとさほど変わりません。おのずと展開する活動も似たようなものになってしまいます。

(図1)




では、二者関係から一歩引いた俯瞰的視点でみてみましょう(図2)

(図2)



地域課題と地域資源、そこにセラピストの強みをどう活かせるかを考えてみます。

地域資源とは、人や組織、施設、制度、風習など活用できる資源を指します。
地域資源を「介護保険サービス」とするとどうでしょう。
上記以外にも、小規模多機能やグループホーム、サ高住など色々ありますね。
例えば、小規模多機能。包括診療で24時間365日、通い・訪問・泊まりを包括的に支援します。
ここに作業療法士の強みを活かしてみます。

作業療法士は高齢者の社会参加を支援する「生活行為向上マネジメント」というツールを活用できます。
365日24時間の支援ですから、規定された診療時間内でなく、その人の生活のタイミングに合わせて支援ができます。
施設外での活動もできますから、その人が “やりたいこと”“やりたい場所” で “できるようにする” という、まさしく作業療法が実践できます。
リハビリテーション技術を介護士に伝えることもできますし、その可能性は大いにありますね。

このように俯瞰的視点を持つことで、自分だけでなく地域の可能性がみえてきます。
ポストイットを使用してディスカッションするのもオススメです。
そのあとの飲み会は盛り上がること間違いなしです(笑)





 
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