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常川 知美 さん

職種:看護師、保健師

訪問看護ステーション/訪問看護師

 

認知症の早期発見など、訪問看護では気付きの視点も提供できます。

 

-常川さんの現在のお仕事をおしえてください

都内の訪問看護ステーションで訪問看護師として働いています。

家族介護の経験がきっかけで在宅医療に興味を持ち、訪問看護師になりました。

どんな天候にも負けず、電動自転車で地域を駆け巡っています。

訪問看護は年齢を問わず、病気や障害のある方が利用可能です。主に医療保険と介護保険の2種類あるのですが、医療保険に該当する方は難病やターミナルの方のような看護ケアを特に必要とする方が多いです。

介護保険を利用する方はケアマネージャーを通し、ケアプランの中に訪問看護を組み込んでいただき、利用できます。どちらも医師の「訪問看護指示書」が必要です。

現在私が勤めている訪問看護ステーションでは、ご自宅で酸素をしながら生活をしている方のケア、一人暮らしの方に対してのお薬のセットや内服確認、病状観察が必要でヘルパーさんによる介助では難しそうな方のお世話。例えば、清潔ケア、排泄ケアなどです。他には機能回復に向けたリハビリが中心となっています。また、介護度の高い方では床ずれの予防や必要な手当てを行い、ご家族やヘルパーさんに対応方法をお伝えします。同じケアができるように連絡ノートなどを利用し連携しています。お薬の塗り方、ドレッシング材の貼り方、褥瘡マットレスが合っているかなども注意しています。

入院治療後も医療や介護を受けながら、ご自宅での生活が継続できるよう、退院前からカンファレンスなどを行うなど訪問看護師の関わりがますます重要になってきたように感じます。

 

-処置以外で看護師として介護者の負担軽減に役立つ点はどのような点ですか?

 認知症の早期発見、難病の方では進行状況などがあげられると思います。

たとえば、娘さんが中心となって父親を介護されていたケースですが、徐々に親子関係の変化がおこっていました。娘さんから父親が徐々に怒りっぽくなってきたと訪問時に相談があり、長く一緒に暮してこられた娘さんとしては、自分の父親が認知症を発症しているということには気づいておられませんでした。認めたくない気持ちもあったと思います。

ご家族だけでは気づかないこと、見落とされていることを早く発見し対応することで、介護負担を遅らせる、負担を軽減することができると思います。大学病院の専門外来にかかっておられても、短時間の診療では見落とされたりすることも、訪問看護が入ってはじめて気づくことがあります。

 

-常川さん自身もご家族の介護経験が長かったそうですが

自分が医療者(看護師)で母もヘルパーであったにも関わらず、祖母、父の介護が言葉に表せないくらい本当に大変で精神的、肉体的、時間的に消耗しました。介護離職も経験しました。

祖母の場合、疾患上の理由や本人の性格もありデイサービスの利用ができなかったので、負担はなおさらでした。

医療・介護従事者である自分たちがこれほど苦しい思いをしているのであれば、知識の少ない家族介護者にとってどれだけの負担となっているのだろうかと考えると胸がしめつけられる思いがしました。

 

―ご家族の介護経験を通して、その後ご自身に何か変化はありましたか?

家族の介護経験から2つの行動につながりました。

一つ目は、研究と政策提言です。

介護者が親族とのトラブルやファイナンシャルプランといった専門的できわめてプライベートな問題を気軽に相談できる窓口、ご家族が介護に専念できる環境整備の窓口、地域の中に介護コンシェルジュのような役割を作れないか、現在の介護保険制度や法律の狭間にある介護者支援をなんらかの形で制度化できないか、そんな思いが強く芽生え、H-PAC※の門をたたき、地域医療に関心のあるメンバーと活動しました。研究成果はもちろんのこと、立場は違っても介護者支援をしたいという同じ想いを抱く仲間に多く出会うことができ、実りの多い経験となりました。

 

※東京大学 公共政策大学院 医療政策教育・研究ユニットHealth Policy Unit(HPU)

医療政策実践コミュニティーHealth Policy Action Community(H-PAC) (H-PACの活動内容) 「医療を動かす」をミッションに掲げ、患者・市民、政策立案者、医療提供者、メディアの4 つの立場から医療政策分野においてリーダーシップを発揮している社会人(学生も可)の参加者が、医療政策の最先端課題を学び、さらに実践的なグループ活動により、政策提言や事業計画作成を行っている。

 

二つ目は、介護者のための商品開発です。

祖母を一緒に介護した母が中心となって、着脱しやすい介護用ズボン「らっくるん」を開発しました。介護生活の大変さを少しでも楽にしたい、介護される方に素敵な生地や柄のパジャマを着てほしい、そんな想いで開発しました。この商品はズボンの上げ下げや体位交換の大変さを前開きにすることで回避しています。また専用のひもを付けたことで、力を使うことなく、皮膚の摩擦を防ぎながら介護される方を横向きにできます。特許も取得しました!

すべて手作りなので量産はできませんが、祖母を実際のモデルに何度も何度も試行錯誤しながら、想いをこめて開発しました。

この介護ズボンで介護という先の見えない生活を、少しでも快適に過ごして頂けたら嬉しいです。

 

-介護者へのメッセージをお願いします。

 介護は私を強くしてくれました。嬉しい、苦しい、悔しい、楽しい、家族との様々な思い出をつくってくれました。「介護者支援がしたい!」想いに突き動かされることってあるんですね。あの時はつらいことにしか感じませんでしたが、今は経験させてもらえたことに感謝しています。

苦しいとき、誰かに聞いてもらうだけで楽になりますよ。泣きたくなったら泣けばいいんです。抱え込まないこと、これが大切かなと思います。

 

 

 

 

 

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