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安井 佑 先生

職種:医師

勤務種別:在宅診療(東京都板橋区 医療法人社団 焔【ほむら】やまと診療所)

 

医療法人社団焔【ほむら】やまと診療所

http://yamato-clinic.org/

 

東京板橋区高島平で在宅診療をされている安井佑先生にインタビューさせて頂き、

在宅診療における「患者さんとのかかわり方」を中心にお話しして頂きました。

 

患者さんに、その人らしい生き方を最期までしてもらうことが在宅診療の目的なので、我々の役割は、診察・処方は3割、患者さんの生活に寄り添うことが7割です。

 

在宅診療の目的は、患者さんがその人らしい人生を送ることを支援すること。

 

-やまと診療所の概要と、現在の取り組みについて教えてください-

やまと診療所は在宅診療のクリニックでして、診療科目は総合内科、外科、形成外科、皮膚科、緩和ケア科、心療内科です。常勤の医師は2名で、非常勤の医師は8名います。

患者さんに寄り添い、患者さん一人一人にその人らしい生き方を最期までしてもらうことを理念としています。

新たな取り組みとしては、ITの積極活用を行っています。現在は医師が書いたカルテが診療レポートに自動反映されて、FAXで一緒に患者さんを診ているケアマネジャーや看護師に共有し、在宅医療の質の向上を図っています。今後は、FAXではなく、ペーパレスにして、電子上の共有ツールで患者さんやご家族にも情報を閲覧できるような仕組みを構築しようとしています。

 

-ITの取り組みの背景や想いを教えてください-

在宅診療の目的は、患者さんがその人らしい人生を送ることを支援することです。

在宅診療において、医師が患者さんを支援する上では、医師と患者さんの間で適切にコミュニケーションがとれている事が最も重要になります。お互いにコミュニケーションの土台となる診療情報があれば、よりコミュニケーションが図りやすくなります。そのような背景から、患者情報の共有化に向けた取り組みを行っています。

 

 利用者や患者さんが知識をつけることも重要

-現在の患者さんを取り巻く環境について、安井先生のご意見を聞かせてください-

病院で、どの医師が担当になるかという事と同様に、どのケアマネジャーが担当になるかも、患者さんの生活を大きく変えることになると思います。

我々が担当させて頂いている患者さんは比較的医療依存度が高い方々のなで、我々が必ず介入し、ケアマネジャーとしっかり連携を取るので問題はないですが、医療依存度が低い介護の場合は、担当してくれるケアマネジャーによって、生活が大きく変わる人が、地域にはたくさん存在すると思います。というのも、患者さんやご家族からしてみれば、良い例と悪い例を知っているわけではないので、判断が難しいからです。

介護保険を活用できるのに電動ベッドをご自身で購入してしまっているご家族も実際にいますので、住宅改修やポータブルトイレも保険で購入できることを知る機会というのも非常に重要だと思います。

 

他にも、病院退院時に介護保険が申請されていないケースも稀にありまして、急いで我々が対応するという事もあります。もちろん、我々と連携を図っている病院は、きちんと事前に申請してくれていますが、世の中全てそうではないので、先ほど言ったような「担当によって生活が変わってしまう」というケースはありますね。

我々と連携を図っているケアマネジャーは、在宅診療に同行し、在宅診療の内容や目的について理解してくれていますので、在宅診療の医師を選択する幅等も広がっていると思います。

 

 診察・処方が3割、生活に寄り添うことが7割。

 -在宅診療を支える上で重要なことは何ですか-

ひとつめは、医師でなくて良い業務を、医師以外の職種が対応することです。

やまと診療所では、PAPhysician Assistant)という専門職が病院・ケアマネージャーとの窓口を担当しています。

業務の具体的な内容は、退院の時期、退院時の状態の把握、ご家族への連絡などで、患者さんが自宅に戻られてからもスムーズな診療ができるような体制作りをしてくれています。

ケアマネジャーの皆さんは医師には直接相談しにくいこともあります。医師も時間が限られているので患者さんの介護の面を全てにおいて細かくフォローするのは困難です。ですので特に医療依存度が高い患者さんを診る上で細かく連携をするためには医師以外の職種の存在が重要になります。

 

ふたつめは、患者さんとの関わり方です。

在宅診療においては、医師としての診察・処方以外にも重要なことがあります。

例えば

・患者さんの1週間の生活リズムの確認し、チームで適切に共有すること

・ご家族の負担を確認すること

・患者さんの生活に寄り添うこと

などです。

病院での診察は、病気の一瞬の断面を捉えますが、在宅診療は患者さんの生活に寄り添いながら診察・処方を行っていきます。在宅診療での医師の役割は、診察・処方が3割、患者さんの生活に寄り添い、生活を整えながら指針を立てることが7割だと考えています。

さらに言えば、生活に寄り添うことは医師の資格がなくてもできます。ですので、現在は患者さんの生活に寄り添うプロであるアシスタントを教育しています。

医師の母数を増やすことや、心ある医師を増やしていくことは難しい問題ですが、アシスタントが活躍することで、在宅診療の質も向上していくと思います。

 

-“生活に寄り添う”というのは具体的にどういうことでしょうか-

在宅診療では病気の進行度よりもその病気が生活にどう影響しているのかを重視します。もちろん医学のプロとして、医療の観点からきちんと医療的なリスクの判断や診察・処方は行いますが、それを前提としたうえで重要なのは、患者さんとそのご家族が、「どう暮らしてきたいか」「何を楽しみにしているか」ということを一緒に考えることです。そして我々が「生活する上で障害になっているものは何か」「その障害に対してどういう支援ができるのか」を考え、実行する事が重要なのです。

 

-なるほど。では、生活に寄り添う際に重要なポイントは何ですか-

 ひとつは、ご家族からの「信頼」です。

在宅診療は、患者さんの寝室や台所に入らせてもらうので、第1条件は、まず信頼してもらうことです。信頼を構築できなければ、何も始まらないのです。

 だから我々は、最初の3~4回目までの訪問では、“医学的に正しいこと”は一旦度外視します。例えば、医学的にはこの薬を飲ませた方が良いが、ご本人が飲みたくないと言うのであれば、飲まなくても良いと伝えて、安心してもらう。このあたりは、医師の方は抵抗感があるかもしれませんが、在宅診療では重要なことだと考えています。実際に病院から処方された薬がサンタクロースの袋のように飲まずに置かれている事も多いですからね。

“どうして良いか分からない”というご家族に対しては、初回の訪問で全て課題を洗い出してプランを立てることはしません。病状が変わるたびに課題も変わっていきますし、次回訪問時に一緒にゆっくり考えていくという事で、ご家族は安心されるからです。

ご本人とご家族がどうしていきたいのかを第一に考えなければ、在宅での看取りまではうまくいきません。

 

もうひとつは、「事業者間の連携」です。

私が担当させて頂いた患者さんですが、90歳の女性の方で、認知症と癌の終末期の方がいました。

娘さんが週に2回介護し、週に3~4回デイサービスに通い、その間に我々と訪問看護チームが対応するという体制でした。通常のデイサービスでは癌の終末期の方の受け入れは難しいですが、そのデイサービス事業者様と我々の間で「なにか問題が起きたら、やまと診療所に連絡する」という信頼関係を構築しました。ご家族の支援も含め、他職種・他事業者が連携することによって、その女性は寝たきりにならずに、最期は大好きな家の畳でお亡くなりになられました。後から娘さんに聞いた話では、患者様の頭文字をとってそのチームを「チームK」と呼んでくれていたそうです。

 

このように、ご本人やご家族から信頼してもらう事、事業者間で適切な連携を図ることで、在宅診療が成り立つのです。

 

 

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