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宮原 歩 先生

職種:言語聴覚士(リハビリの先生)

勤務種別:介護老人保健施設

経験年数:5年目

 

高齢者にとって飲み込みはリスクも伴いますが、そのリスクを回避する方法と、食べる喜びを伝えることができるのが、言語聴覚士です。

 

言語聴覚士はコミュニケーションのプロ

 -宮原先生、現在のお仕事の内容を教えてください-

老人保健施設で、失語症の方に対するリハビリテーションと嚥下障害の方に対するリハビリテーションを行っています。

 

-では、発語に関することと嚥下に関することを分けて質問させてください。まず、失語症に関するリハビリテーションの目的と意義を教えてください。-

利用者さんが言語聴覚士と一緒に発語の練習をすることにより、少しでも話せることができるようになることが最大の目的です。ただ、実は言語聴覚士の重要な役割は、それだけではありません。

 言語聴覚士は、利用者さんと話す機会が多く、利用者さんのニーズを汲み取れる能力を持った人が多いので、実際に利用者さんからリハビリテーション以外の相談を受けることも多いです。身内には言えないけど、他人には言えることは誰でも持っていますからね。

 もちろん、リハビリテーションの相談も受けます。例えば、認知的にしっかりしている方は、「先生のいう事をきちんと守らなきゃないけない!」と思う方も多いのですが、どんなに辛くても直接先生には言いにくいものです。そんなとき、我々言語聴覚士に「あの薬は辛い」「あのリハビリは実は辛い」という悩みを言ってもらえることもあります。それがたとえ失語症の方であっても汲み取れる言語聴覚士は多いです。

 

-なぜ、言語聴覚士はニーズ汲み取れると思いますか-

もちろん、言語聴覚士としての知識を前提としたうえでではありますが、利用者さんとのコミュニケーション量が豊富で、かつ利用者さんのバックグラウンドの情報知識を確実に頭にインプットしているからです。

 

-バックグラウンドとは具体的にはどういうものですか-

その方の家族歴、職歴、目標などのパーソナルデータ全てです。

例えば、失語症の利用者さんが、家族に迷惑をかけたくないからと、「ご自身の口座から自分のリハビリ費や入院費を払ってほしい」と家族に伝えたいけど伝えられないというケースがあり、それが理由でリハビリに集中できない人もいました。でも我々は、リハビリに集中できない理由は何か?という仮説を立て、頭の中のパーソナルデータ、そして実際に訓練を中心としたコミュニケーションを図りながら、ニーズを捉えていくのです。

他にも、立ってはいけない場面で立ってしまった方のケースで、実は部下に公衆電話で電話をしたかったという例もありました。その方は「社長」でした。

「なぜ、その行動をしたのか?」「なぜ、その行動をしたいのか?」という事をその方のバックグラウンドまで併せて理解し、仮説を作り、コミュニケーションを図る。

このようなことも、本来の言語聴覚士の役割以外にも求められていることだと思いますし、そういう意味では、利用者さんと心の距離を近づけることができる職種だとは思います。

 もちろん、ニーズを汲み取った瞬間に、他のリハビリ職、ドクター、ケアマネジャー、家族の方には迅速にご連絡し、ご家族を含めた多職種で全力でサポートします。

 少し、悩み相談室みたいな話になってしまいましたが、より専門的な観点で言うと、

利用者さんの「コミュニケーションの潜在能力」を言語聴覚士は理解できます。

「この人は、ここまでなら発語が改善できる」という事が分かりますので、そのゴールから逆算して発語のリハビリテーションもできますし、答えやすいように質問の仕方等も工夫できます。

 

「モンブランのケーキは食べてはいけないけど、プリンなら食べてもリスクはない」と判断できるのが言語聴覚士です。

 -ありがとうございます。では嚥下(飲み込み)に関するリハビリテーションの目的と意義を教えてください。-

ひとつは、少しでも食べ物や飲み物の飲み込みがしやすくするリハビリテーションです。

ふたつは、嚥下のリスク管理です。「飲み込み」は方法を誤ると大変危険な状態に陥ります。

ですので、言語聴覚士は、「どのくらいまでなら飲み込めるのか(逆にどこまで飲み込むと危険か)」「どうすれば飲み込めるのか」「どんな食事なら飲み込めるのか」ということを評価します。例えば、利用者さんが「どうしてもモンブランのケーキを食べたい」と言ったときに、「プリンまでなら大丈夫」と評価できるのが、言語聴覚士です。

リスクを伴う動作であるため、かなり慎重に評価しますし、評価後は、家族とケアマネジャーには確実に伝えます。食べることは喜びのうちのひとつですが、喜ぶからと言って何でも食べさせて良いわけではありません。ただ、少しでも食べる喜びを見出してほしいので、我々が訓練を行うのです。

 

-利用者さんの嚥下能力を鍛えるために、どんな訓練を行っているのですか-

舌の動きの練習、口唇の動きの練習、のどの筋肉をつける練習、食べ始める練習、口腔ケア、誤嚥リスク評価などが主です。

 

-先ほど「モンブランケーキ」の例がありましたが、他にも具体的なアドバイスの内容はありますか-

例えば、

「普通の水はダメだけど、とろみを付けた水なら飲める」

「どの程度(スプーン何杯程度)とろみを付ければ良いか」

「栄養補助食品もジュースではなくてゼリー状にすべき」

「胃ろう・経管の方なら、いつから食べ物を食べて良いか」

などは、アドバイスできると思います。

 

-介護食にはUDF(介護食の区分)があると思うのですが、区分以外にも評価できることがあるということですか。-

UDFは適切な区分であるとは思っています。

ただ、実際の現場は区分の評価だけでは必ずしも安全とは言い切れません。

例えば、

「水を飲んでもむせるのか、むせないのか。」

「食べ物を食べた後に口に残るか、残らないか。」

「飲み込むまでどのくらいの時間がかかるか。」

「ご飯を食べた後に、声が水っぽくなっていないか。」

「舌を唇から出して、上下左右に動くか。」

「口腔ケアは適切にできているか。」

など、介護食の区分の評価方法以外の評価もリスク管理のためには必要だと思いますし、それらの状況を総合的に判断したうえで、固形物かペースト状にするか等を判断する必要があります。

 「3mlの少量の水を飲めない場合、口から食べ物を食べるのは難しい」など、量的なアドバイス等は言語聴覚士に聞いて頂ければと思います。

 例えば、オヤミルでアドバイスできるならば、

「水を飲んでむせるなら、この程度とろみを付けてみてください」

「食事は水っぽいものは避けて固形物やペースト状にした方が良い」などのアドバイスはたくさんできると思いますので、実際の現場でもWebでも言語聴覚士に相談してもらえればと思います。

 

 

 

 

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