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木村 佳晶 先生

職種:理学療法士

勤務種別:リハビリ特化型デイサービス責任者

リハビリ特化型デイサービスの責任者として勤務されている木村先生のインタビューです。以前、陸前高田で勤務されていた木村先生。東北への想いもお話しいただき、我々は胸が熱くなりました。専門職の方にも是非見て頂きたいインタビューです。

 

約束したことがあります。「東北に、リハビリができるデイサービスを作る」と。

 

-木村先生は、現在リハビリ特化型のデイサービスの責任者として勤務されていますが、その背景を教えてください。

はい、理学療法士の学校を卒業後、精神科病院(精神科のデイケア)に入職しました。

当時は、まだ介護保険制度ができて間もない頃で、精神科の訪問看護ステーションで訪問リハビリテーション等にも従事しました。

 その後、立ち上げ1年目の老健に入職しました。

老健に入職した理由は、老健という中間施設を活用し、地域の中学校区でリハビリ資源を適切に循環させたいと考えたからです。現在もそうですが、都心では、様々なリハビリ資源がある一方で、地方ではリハビリ資源は本当に少ないのです。特に当時は介護保険が出来たばかりという事もあり、今以上にリハビリ資源が少ない状況でした。

 私が入職した老健では、入所施設と通所施設がありましたが、立ち上げ1年目ということもあり、在宅復帰への機能は高くはなく、言わば“特養のような老健”といっても過言ではありませんでした。

 中学校区にリハビリ資源を循環させ、在宅でも安心して介護ができる状況を作り出すためには、現状を変える必要があると思い、「1年以内に訪問リハを立ち上げる」という約束のもと、理事長と話し合ってリハビリテーション科に勤務するスタッフを2人から6人に増やし、訪問リハビリテーションを立ち上げました。

 介護が必要な方は、通所では受け身であることが多いため、訪問リハビリテーションを立ち上げることで、利用者さんの生活・環境・状況を見て、リハビリテーションを実施し、ご本人の“やりがい”や“生きがい”を見出して頂きたいと考えたのです。

 そして、その施設で勤務して5年くらい経った2011年3月11日、東日本大震災が起きました。

 被災地では高齢者の方がたくさんいましたが、緊急性の高い医療支援から先に始まるため、リハビリ従事者は、現地に行くに行けない状況が続いていました。

一方で、東北の知り合いに聞くと、「日ごとに被災者の体力や身体機能が落ちている」という話を日常的に聞くようになり、私自身、話を聞いているだけでも辛い状況でしたので、まずは1週間、単身東北に行くことを決意しました。東北で感じたことは、「リハビリ従事者は、本当に様々な局面で支援する事ができる」という、院内では気付かないようなことばかりでした。

 

東北で、ボランティアを続けている最中、陸前高田市で訪問看護ステーションの立ち上げが制度的に可能になったため、ある会社と一緒に訪問看護ステーションの立ち会げに関わり、1年間、訪問リハビリテーションに従事しました。

陸前高田市は、人口2万人と小さな市ですが、リハビリ資源がほとんどなかったことや自治体のご協力のおかげで、3か月で満員になりました。それだけニーズがあったという事ですよね。

現地では、リハビリテーションを実施するにあたり、ADL(※1)やIADL(※2)、加えて精神的なサポートも含めて実施させて頂きました。

(※1)食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的動作のこと。

(※2)『手段的日常生活動作』と訳され、日常生活を送る上で必要な動作のうち、ADLより複雑で高次な動作をさす。例えば、買い物や洗濯、掃除等の家事全般や、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗ること、趣味のための活動も含めた動作のこと。

 

その想いが、一般社団法人 日本訪問リハビリテーション協会の松井現理事長と、(故)塩中雅博先生に伝わり、応援に駆け付けてくださいました。

「リハビリが必要な方は日本全国にたくさんいるが、リハビリの資源は偏在している。特に東北の沿岸部はリハビリの資源が特に少ない地域で、訪問リハビリテーションを立ち上げたことに感謝している」と言って、応援してくださいました。

 私は家庭を持っている身でもあるため、毎週埼玉から陸前高田まで6時間かけて通い続けました。

 

-木村さんの、それらの素晴らしい活動における原動力は何ですか。

はい。私の原動力は2つあります。

ひとつはデイサービスできちんとしたリハビリを提供しようと、介護保険構築当時から、いち早く取り組まれていた塩中雅博先生の想いに共感し、その想い自体が原動力になっていること。

もうひとつは、介護の不公平性を無くしたいという個人的な想いが原動力となっています。

私は、介護保険制度が公平であるとは思っていません。先ほども申し上げたように介護資源が偏在しているためです。私は現在、東京で勤務していますが、東京では介護者の皆様が、たくさんの介護・リハビリ資源の中から適切な資源を選択する事ができますが、私が勤務していた東北などでは、そもそも資源が非常に少なく、選択する事ができない地域でもあるのです。にもかかわらず、介護保険料は同じなのです。

その現状は、何としてでも変えないといけないと考えていますし、理学療法士・作業療法士の使命のひとつであると感じています。

 現状を変えるためには、介護資源が少ない地域でも、事業として成り立つ仕組みが必要ですし、人が少なくても人材を確保できる仕組みが必要です。

それらの使命を果たすために、塩中先生と一緒に仕事を始めたのです。

 

当時、私は塩中先生に約束したことがあります。

 

「東北に店舗を作る」

 

実現はまだできていませんが、事業継続の観点も必要なので、時間をかけてきちんと準備をしていき、必ず実現させたいと思います。

 

-木村先生のような理学療法士が増えていければ、地方の人もリハビリ資源にアプローチできる日が必ずきますね。では、現在の東京でのお仕事で、責任者として意識されていることを教えてください。

ひとつは、利用者さんに気持ちよく利用して頂くための環境づくりです。

 適切なリハビリを継続的に提供していくためには、利用者さんのニーズに応えていける品質管理が重要です。

品質とは、①人材(育成も含む)と、②リハビリの質です。

リハビリの質とは、利用者さんの生活に意義のある結果を提供するということです。我々が提供しているリハビリテーションは、運動するだけのリハ(いわゆる運動リハ)ではなく、リハビリテーション自体に焦点を当てているため、利用者さんの生活・やりがい・生きがいを重視します。さらに、利用者さんの身体面・精神面・動作の分析等を科学的根拠に基づいて適切に評価し、利用者さんごとの個別のメニューを作るのです。

また、そのメニューや評価が、適切に利用者さんの生活に還元できているかを重視します。例えば、“歩けるようにする”というのは、理学療法士の支援のうちのひとつですが、“歩く”という動作が、利用者さんの生活のどの部分に結びついているのかを徹底的に考えます。散歩が好きなのか、台所まで行く必要があるのか、横断歩道を自力で渡れるようになるのか、などです。

アウトカムを出し続けないと、業界自体が沈んでしまうため、そのような環境づくりは徹底しています。

我々の施設では、そのような環境づくりを徹底している結果、要介護2の方が要支援になることもあります。

 もうひとつは、専門家というフィルターを通して見るのではなく、“当たり前に考える”ということです。自分が利用者さんの立場ならどうするか・どうしたいかという事を、まず考えるという事ですね。

 

 

-現状、要介護者(約600万人)の数に比べて、リハビリ専門職の数は足りないと言われていますが、今後、ひとりひとりの理学療法士が考えていかなければならないことを教えてください。

まず、600万人の要介護者がいるという事実に疑問を持つ必要があると思います。

当然ですが、600万人の要介護者が存在するという事は、600万回認定したからなのです。

東北でリハビリテーションに従事していた時に感じたことは、地方では介護保険を使わない人が圧倒的に多いのです。

家も大きいですし、段差もあるし、農作業もするし、ゲートボールもする・・・自然・土・太陽に日常的に触れている方って、本当に元気なんですよね。

ですので、理学療法士や作業療法士の地域での支援活動やその役割は、ますます重要になってくると思います。元気な高齢者を増やすために重要なことは“環境”と“役割”だと思いますね。

 

一方、リハビリ従事者の数ですが、現状、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士合わせて20万人程度なので、絶対数だけを見ると、600万人を支えることは困難です。また、病院で勤務しているリハビリ従事者が多いため、もっと病院のリハビリ従事者は地域で活躍する必要があると思います。

 加えて、2018年に、医療保険と介護保険の同時改定がありますが、単位数の上限の変化や日数の短縮、単位の包括化等により、リハビリ従事者は、病院だけでは生き残れなくなる状況になってくると思います。

 一方で、リハビリ従事者が地域で活躍するためには、その土壌も必要だと思います。そのうちの一つが“教育”だと考えています。

教育とは“地域での活動の楽しさを伝える事”“病院で働くリハビリ従事者が地域で活躍するためのきっかけを作ること”等です。

 地域での活動の楽しさのうちのひとつは、自分の身ひとつで利用者さんと接するため、真正面から利用者さんを支援できることにあります。

 ただ、利用者さんが、リハビリ従事者に依存しないようにすることも重要です。

特に訪問リハビリの場合は、“ゴール”をきちんと決める必要があります。

「目標を一定期間でしっかり達成したら、一旦自分でやってみましょう」という事です。その上で、また何か困りごとがあれば支援させて頂くのです。

 訪問リハビリの利用者さんの疾患は、進行していく難病疾患、骨折などの整形疾患のように元に戻る疾患、脳梗塞のような後遺症が残る疾患の3つのパターンに大別されます。

難病疾患のような進行していく疾患の場合は、ターミナルまで付き合いますが、骨折・脳梗塞などのようにリカバリーできる疾患の場合は特に、“ゴール”をきちんと定め、自立を支援する事が重要になるのです。

 

-具体的にリハビリ従事者が地域で出来ることを教えて頂けますか。

特に訪問リハビリに従事している理学療法士は、資源と人を結びつける役割を担えると考えています。いわば、利用者さんの色んな悩みや疑問に対して相談できる、“かかりつけ療法士”ですね。

「この地域の、この中学校区は、私が守るんだ!」という想いを持った理学療法士がたくさん出てくることが必要です。最近では、地域で活躍しているリハビリ従事者もたくさんいますね。

今は色んな地域で色んな活動を増やしていくことが重要である一方で、将来的には、それらの活動を、縦割りではなく、ある時期になったら統合していく機能や仕組みが必要になると思います。

 

-資源がたくさん増えてきている中で、利用者さんのリハビリ資源を選ぶ視点も変わってきていますか。

はい。様々な高齢者および、そのご家族の方と関わらせて頂きましたが、高齢者の方ご自身が、ご自分の社会的な役割を見出し、それを実際に生活の中で実践できるかという事が本当に重要だと感じます。

リハビリ資源が増えていく中で、より質の高い施設が選ばれる時代がくると思います。

質の高い施設とは、先ほども申したように、利用者さんご自身の生活が、良くなったか否かという事に尽きると思います。

生活を良くするためには、適切な目標設定が欠かせませんが、目標設定は上辺だけのコミュニケーションだとできないのです。

利用者さんの家族歴・病歴・生活歴・仕事歴・生活環境、そして世間話も含め色んな事を共有しなければ、目標は設定できません。

 資源が増えていくにつれ、「こういう生活をしたい」という目的意識を持ってご利用される利用者さんも増えてきました。

最近ではインターネットでホームページ等を見て、ご自分で選択している人が増えてきたため、介護施設や理学療法士は、ますますリハビリの質を高める必要があると思います。

ただ、それは我々がリハビリ特化のデイサービスを運営しているから利用者さんの意識の変化を感じることができるのかもしれません。リハビリ特化型なので、基本的に目的意識がはっきりしている利用者さんがご利用されますし、ケアマネージャーの方も、目的意識を持った方を紹介してくださいます。

最近では、

iTherapy(https://itunes.apple.com/jp/app/id981786230?mt=8&ign-mpt=uo%3D4)というリハビリ資源を可視化したアプリもあるため、そういうシステムもどんどん活用してほしいと思います。

 

理学療法士も、利用者さんの自己効力感を高めることができる職種だと思いますので、利用者さんとともに成長していければと思います。

 

 

 

 

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