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山口 剛 先生

職種:理学療法士

勤務種別:整形外科クリニック医院統括事務長

 

利用者さん・介護者さんもリハビリ専門職も、モチベーションが上がらない時は、ご自身の「志」に立ち返ってください。

 

日常生活活動に何らかの不安がある場合や、ぎこちなさを感じる場合は、リハビリテーションの利用を考えてください。

 山口先生、こんにちは。山口先生は現在まで8つの病院・施設で理学療法士として勤務されていたとお聞きしました。そこで教えて頂きたいのですが、高齢者にとってリハビリは重要な治療だと思いますが、リハビリを実施する意義とベストなタイミングを教えてください。

リハビリテーションというと、病院で行われている機能訓練の光景を思い浮かべる方が多いと思いますが、まず、人は何のために物を持ったり、歩いたりするのかを考える必要があります。箸を持って食事をする、トイレに行って排泄する、包丁を持って料理をする、スーパーに行って買い物をする、趣味や仕事に打ち込むなど、生活上、不可欠な目的と行動をもとに私たちは社会生活を営んでいます。

リハビリテーションは単に訓練をさす言葉ではなく、障害をもった方が可能な限り元の生活を取り戻すことを意味し、障害自体が軽減するような機能訓練を行うだけでなく、ご本人が生活の中で積極的に身体を使う事が重要なのです。さらに言えば、身体の不自由が残っていても安心して生活ができるような社会を実現することが重要です。

したがって、リハビリを実施するベストなタイミングは日常生活活動に何らかの不安がある場合や、ぎこちなさを感じる前にリハビリの要素を含む何かをすべきだと思います。

 

在宅介護者がリハビリテーションの専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)にアプローチできる方法を教えてください。

直接、接する機会や場がほとんどないのが現状ですね。その点については私も課題であると認識しています。現状は、ケアマネジャーや訪問看護を間に挟む他ないので、今後は街のリハビリ相談窓口等ができれば良いと考えています。

 

在宅介護者がリハビリテーションの専門職と接する際に、どんなことを要望できますか

理学療法士として、身体の動かし方、身体機能の維持の方法はもちろんのこと、常に吸引を必要としていたり、廃用が進んでいてADLの低下が著しい方の場合に関しても、ADL動作の方法等も相談してもらえればと思います。身体と生活の双方からご支援できるので、何でも聞いてもらえればと思います。

 

山口さんの理学療法士としての今までのご経験を踏まえ、印象に残っている利用者さんと、山口さんがその際に理学療法士として最も意識されていたことは何ですか

非常に依存度が高い患者さんがいました。最初はその依存が、理学療法士という職種に対してなのか、私自身に対してなのかが分かりませんでしたが、やはり理学療法士という職種に対してなんですよね。

理学療法士としての施術はもちろん必要とされていたのですが、話を聞いてくれる、決まった時間に来てくれる、というニーズも感じました。つまり、心のよりどころを探していたのです。身体機能が低下すると、心も弱ってくることもあります。それをケアするのも我々プロの役割であり、本来の役割プラスαが必要だと認識しました。

 

 

頭の切り替えが難しいときやモチベーションが上がらない時は、ご自身の「志」に立ち返ることが重要です。

 ところで、山口さんは理学療法士としてのみならず、専門職の人材育成をされたり、起業やビジネススクール(MBA)、医療法人での事務長など様々な領域でご活躍されていますが、その背景と具体的な方法論を教えてください。

色々な領域で活動しているため、最近、医療関係者からは「理学療法士なのにすごい」「理学療法士にはない考えだ」とよく言われることがあります。

ただ、私の活動は理学療法士の職域を飛び越えているという風には思いません。

なぜなら良質な社会人であることと良質な医療人であることを切り分けて考えるべきではないと考えているからです。

私は今まで理学療法士の限界を突破したいという気持ちに突き動かされて色々な活動をしてきました。

しかし、今後はリーダーを育てることに注力したいと考えており、そのために現在、ビジネススクール(MBA)に通っています。

 

リーダーを育てたいと考えている理由を教えてください。

理学療法士は、10年後に20万人を超えると言われており、今の2倍以上の数になります。

一方で病院の病床数も減少しているので、病院で働くという事が、安泰なキャリアとは言い切れなくなってきます。そのような状況になった際に、重視されるのは「質」です。

 

しかし、現在、理学療法士が社会人基礎力を学ぶ場はほとんどありません。

新人臨床経験が5年あれば、教員になれるシステムであり、その教員も教職を持っているわけではないので、社会人としての基礎力を学んでいる方は少ないわけです。教える側も教えられる側も、社会人基礎力を学ぶ「場」が少ないのが現状です。個人的にそのような状況を課題として認識しており、リーダーを育てる場があれば良いとずっと考えていました。2015年、私は「医療専門職のキャリアデザインを考える会」を発足しました。リーダーを育てる場を補える存在になることができればと考えています。

医療専門職を養成するシステムだけでなく、この10年の社会をリードする社会人基礎力を持った医療人を養成するシステム作りは急務だと感じています。

 

では、山口先生が普段からキャリアデザインについて意識されていることを教えてください。

きっと理学療法士の方々は勉強熱心で真面目な方が多いと思います。実際に私も、そのような素晴らしい仲間に囲まれ勉強していた時期もありました。ただ、学会や論文等に追われていた30歳の時に気付いた事がありました。

 

「理学療法士として大切なことを心に留めておくことはもちろんだが、より重要なのは、世の中にどんな影響を与えたいか」だと。

 

それは、どんな領域でも良いと思うのです。

「高齢者や介護者の方々を幸せにしたい。」

「小児リハビリで、たくさんの子どもたちを救える仕組みを作りたい。」

など、色んな目標があると思うのですが、

やはり大切なのは、「志」なんですよね。

本当にこの一言に尽きると思います。

 

何のために自分の時間と自分の知恵を世の中のために使うのかということを反芻することがとても重要だと思いますし、私自身、理学療法士になって十数年が経ちますが、いまだに仕事で最も重視していることは「やりがい」なんです。

 

自分の志を出発点にして考えていけば、時間の使い方も自ずと決まってくると思います。今お酒を飲むべきなのか、本を読むべきなのか、身体を鍛えるべきなのか・・・・。

頭の切り替えが難しいときやモチベーションが上がらないときは、いつも自分の志に立ち返れば良いと思います。

 

これは、理学療法士だけでなく、利用者さん、介護者さんも同じだと考えていまして、リハビリをする目的は何なのか、何を改善したいのか、どんな生活を送りたいのかということを反芻して頂けると、より効果のあるリハビリテーションをご提案させていただく事もできますし、なによりご本人のモチベーションの度合いが違うのです。

 

リハビリを提供する専門家も受けられる利用者さんも、是非、この志を出発点に考えて頂ければ嬉しく思います。

 

 

 

 

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