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宇津木 康弘 先生

職種:理学療法士(リハビリの先生)

勤務種別:回復期病院(リハビリテーション花の舎病院 リーダー)

経験年数:10年目

 

リハビリ中に患者さんが感動の涙を流したことは、私のモチベーションになっています。

 

リハビリ職のエゴは捨てるべき。

-現在の宇津木先生のお仕事と普段からリハビリについて考えていることを教えてください-

現在は、回復期病院で脳卒中や大腿部骨折、パーキンソン病で、まだ在宅に戻れない患者さんに対してリハビリテーションを行っています。

回復期病院では、「歩けるようになりたい」「自立して身の回りのことをしたい」という患者さんは多いのですが、実際、介助が必要になるケースも多いです。

機能は時間の経過とともに低下することを、事前に伝えるべきだと思いますが、リハビリ専門職は、もっと良くしたいという気持ちが強すぎて、患者さんにも最大能力を引き出す事求めがちです。しかし、実際に自宅に帰ると生活環境が異なるので、自宅ではできないことも多々あります。ですので、「とにかく良くするんだ!」とか「絶対良くできる!」というリハビリ職のエゴは捨てるべきだと思います。

 

一番重視するのは、患者さんにとって楽かどうか。

-では、宇津木先生が、リハビリのプロとして意識していることを教えてください-

患者さんに「頑張ればできるレベル」を無理強いすると、患者さんも辛くなるし、長続きしません。特に経験年数の浅いスタッフは、「これならできるだろう」というリハビリ職の仮説の中でリハビリを実施してしまっていることが多いですが、患者さんのご家族から見ると、ハラハラするものです。

 

私が意識しているのは、やはり「患者さんにとって楽かどうか」です。

これは、在宅の環境と介護者の方の想いを重視するということです。

 

患者さんもご家族も、入院当初はリハビリ自体が初めての経験であることが多いので、病気になる前のレベルに戻したいという想いが強いですが、回復期病院でリハビリしていると現実的な目標を設定するようになります。回復期病院はリハビリ期間が3か月と決められていることもあり、ハードルの高い目標を設定する患者さんは少ないですが、もう少し現状を楽にしたいという想いを持った人は多いですね。でも、それはいい傾向で、在宅に戻ってから生活するためには、やはり現実的なゴールをひとつひとつクリアしていく必要があるのです。

 

 ご家族の支援によって、リハビリ職も予測できない回復を実現することもある

 -回復期病院で印象に残っているご家族さんはいますか-

経験年数が長くなると、患者さんのおおよそ身体機能の回復度合いを予測することはできますが、良い意味で予測が外れることもあります。

ある脳神経障害の男性の患者さんのお話です。その方は昼間からお酒を飲んでいるような方でしたし、症状がかなり深刻だったので、私も他のリハビリスタッフも在宅復帰は難しいと予測していました。ただ、その方のご家族のご支援によって、回復を実現したのです。

ご家族は奥様と娘さんでしたが、ご本人のベッドやトイレでのリハビリの練習姿をずっと観察し、一緒に介助の練習をしたりリハビリの練習をしたりしました。

「こんなこともできるようになるんだ」「こうすれば本人は楽なんだ」と勉強するうちに分かってきて、どんどん表情が明るくなっていきました。また、私たちがいないときも移乗の練習をされていたそうです。その結果、ご本人は在宅復帰することができました。

 

ご家族にリハビリする姿を見てもらう時は注意も必要

ただし、ご家族が親身になられているときには、リハビリ専門職は注意しなければなりません。

介助は簡単なことではないので、実際やってみて、諦めてしまうご家族もいます。

ですので、リハビリ職が働きかけることは重要ですが、その内容とタイミングは非常に重要です。

リハビリ職ができることと、ご家族ができることは違うので、ご家族ができる環境設定や介助方法を伝えることが大切です。

リハビリ中にご家族が来ると嫌がる人もいるので、タイミングも重要になります。

内容とタイミングの勘所は経験年数とともについてくるので、若手のリハビリ職はリーダーと相談しながら進めていくと良いと思います。

 

 

患者さんがリハビリ中に泣いたとき、やりがいを感じた。

-リハビリ専門職としてのやりがいを教えてください-

70歳代の脳梗塞の患者さんがいました。

その方は、台がないと立てない状況で、一生懸命リハビリをされていました。

また、認知的にかなりしっかりされており、あまり悩みを言わない方だったので、普通にリハビリをしていると、その悩みに気付かなかったと思います。

でも、その方の表情等をつぶさに観察していると、左足が「しっくりきていない状況」であると理解することができました。それから、特に左足を動かすときは、細かなコミュニケーションを取り続けました。

ある日、台を使わなくても立てた時があり、その時に静かに涙を流されていたのです。

「こんなことが出来るんだ」「左足がしっくりこなかったことが歯がゆかった」と。

 

確かに3か月という短い期間で完全に心を通わすことは難しいかもしれません。

悩みを言わない我慢強い人もいます。

諦めてしまっている人もいます。

そんなときに、どう心を寄り添うのか。どう人を見るのか。

そういうことが重要だと思います。

 

そして、全てをリハビリ職がやらないことも重要です。

本人と課題を考え、ご自身で目標を達成することが、ご本人の達成感に繋がるのです。

 

 

 

 

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